香川県高松市の小児科・アレルギー科・小児循環器内科 医療法人社団裕心会 あきた小児科クリニック

医療法人社団裕心会 あきた小児科クリニック 小児科・アレルギー科・小児循環器内科

プライバシーポリシー

心臓病の子ども達と共に

ホーム >> 心臓病の子ども達と共に >> 14.現在・過去・未来

14.現在・過去・未来

今から約20年ほど前、僕が大学に入ったばかりの頃に流行った渡辺真知子の歌の一節に「現在、過去、未来・・・・・」というのがある。僕の友人に彼女のコンサートの追っかけをするほどのファンがいて、下宿に遊びに行くと決まって聴かされたものだ。僕自身が大ファンだったわけではないが、僕の青春時代の思い出の歌の一つにはあげられる。以前、あることで悩んだ時、なぜかふいにこのフレーズが頭に浮かんできた。当時、僕は高松赤十字病院で一般小児科のほかに、専門外来として小児循環器外来をやっていた。医師になっての大半を小児循環器疾患中心の生活を送ってきていたが、この病院に来てからは、心臓病の他にもアレルギー疾患や一般感染症、そして拒食症などの心身症や不登校などの患児に接する機会が多くなってきた。しかし、心身症に関してはまったくの素人に等しかった僕がこうした子どもたちを診ていていいのかという思いから、本格的に勉強を始めた。

ところが、視点を変えて数10年前の過去を振り返ると、そこには心身症とはけっして無関係ではなかった自分がいることに気付く。それはちょうど僕が小学校6年生の時のことである。幸か不幸か小学校の児童会会長に選ばれてしまい、それがきっかけで不登校に陥ってしまったのだった。その原因は、大勢の人前でしゃべったり、先生と児童会役員が集まって行う代表委員会でみんなの意見を取りまとめ、議長として会議を運営したりすることが苦痛だったからで、1つ上の学年の先輩がすばらしい成果を上げていたことも大きなプレッシャーになっていた。ふだんは学校大好き少年だったが、代表委員会が近づくと気が重くなり、学校に行くのが嫌になっていた。そして児童会会長になって数カ月した頃、ついに「代表委員会が近づくと学校に行けない」状態になってしまった。心配した両親は学校の児童会担当の先生とも数回相談したり、いくつかの小児科にも連れていったようだ。今でも強烈に残っている記憶は、ある病院の精神科に紹介されてそこで脳波を取られたことである。「脳波には何も異常ありません。身体もどこにも悪いところはないようだし、単なる気持ちの持ちようじゃないですか?」と言った医者の言葉も鮮明に覚えている。

結局、僕を救ってくれたのは担任の鬼教師(学校でもっとも恐れられていた30代の男の先生)であった。「お母さん、今ここで彼を児童会会長から降ろすことは簡単ですが、それをしてしまうとこれから先の彼の将来に悪い影響が残ると思います。ここは何とか続けられるように一緒に頑張ってみましょう。私は折を見て学校の側から彼を引き寄せますので、お母さん、お父さんはお家の方から彼の背中を押してあげてください」後から聞いたところによると、担任の鬼教師はそんなことを言ったそうだ。そうした周囲の配慮のおかげか、僕の不登校も一過性に終わり、その後は代表委員会の仕事もそれなりにこなすことができるようになっていた。肩肘を張らずに、自分のペースで自分なりの児童会会長でいればいいことに気づき、ピンチを脱出できたのであった。「僕は僕でやっていけばいいや」と良い意味での開き直りができたことがよかったのだが、それが鬼教師の深慮と配慮のおかげであったのは言うまでもない。その鬼教師、いや恩師は後に校長先生となられた後、とっくの昔に退職されたと聞いた。最近の学校の荒廃を見るにつけ、あの先生が校長をしていた学校はどんな学校だったのだろうと楽しい想像をしたりもした。そんな僕の過去の経験も、現在自分が子どもたちを診療する上で多少のプラスになっているように思える。目の前で悩んでいる子どもたちやそのご家族に、遠い日の自分や自分の両親の姿が重なることもある。「君だけじゃないんだよ、先生もそうだったんだ」と声をかけたくなる時がある。

そして、未来・・・これからの僕の小児科医生活はどういう方向へ流れていくのだろうか。小児循環器疾患の方も頑張っていきたいし、心の悩みを抱える子どもたちや子育てに戸惑っているお母さん、お父さんとの触れ合いも大切にしていきたいし、やりたいことがいっぱいある。いずれにしても、心臓病のハートと心の問題のハートと、ダブルハート路線はしばらく続きそうである。

ページトップへ

Copyright © 2009 Akita children's clinic. All rights reserved.