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心臓病の子ども達と共に

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11.テレビドラマと現実ドラマ

ひと昔前には『救命病棟24時』『星の金貨シリーズ』『輝く季節の中で』『振り返れば奴がいる』、最近では『ドクター・コトー診療所』『ブラックジャックによろしく』など、テレビドラマにも医療現場はよく使われる。そこに登場する医師たちは江口洋介、竹野内豊、中居正広、織田裕二、妻夫木聡など今をときめくイケメンばかりである。美人だけど頼りない女医さんや、やっぱり美人でしっかり者の看護師と反発し合いながらも引かれ合うのがお決まりのパターンだし、周りには必ず意地の悪い先輩医師や卑劣な同僚がいたりする。そして、毎回毎回これでもかというぐらいにとんでもない事件が持ち上がるのである。

実際の医療の現場ではこうしたテレビドラマの設定ほど突拍子もない事件が頻発することはない代わりに、毎日毎日テレビドラマ以上の現実的なドラマがある。僕がかかわった患者さんたちに限っても、この1週間だけで次のようなエピソードがあった。心室中隔欠損と漏斗胸を合併している7歳の男児が転居のために紹介されてきたが、これまではずっと心配ないと言われ続けてきたのに、今回心エコーをとってみると従来は指摘されていなかった中等度の大動脈弁閉鎖不全が出現していて、手術を考える必要が出てきたこと。結婚後数年して待望の妊娠をしたのにもかかわらず、高度の胎児徐脈と複合心奇形のために残念な結果に終わった女性が1年後に妊娠、彼女の不安が強いために胎児心エコーを依頼されたが、今回はまったく異常がないことを告げると心エコー室のベッドの上で大粒の嬉し涙を流されたこと。ファロー四徴症のために他院で心臓カテーテル検査の予約をしていた10ヶ月の男児が、繰り返して風邪を引いたために検査延期が続いてしまい、今度やっとカテーテル検査を受けることができて手術予定が決まりましたとわざわざ報告にきてくれたご両親。6ヶ月間不登校が続いていたが、3学期の始業式から通えるようになりましたとうれしそうに電話をくれた中学生の女の子。どれもテレビドラマのストーリーにはなりにくいかもしれないが、一人一人にとってはそれぞれの状況がテレビドラマ以上のドラマであり、彼ら自身が主人公なのである。

さて、目を患者さんから医療者側に移すとどうであろうか。医師もあれだけカッコいい男が揃っているわけがないし、あんなに美人看護師ばかりの病院があるとは思えない。ただし、テレビドラマ並みに腕のいい医師はいるだろうし、医師と看護師あるいは医師同志の結婚は珍しくもなく、僕の医局だけでみても10組以上はある。多くの医師や看護師が一人前に成長していくまでの過程を考えると、テレビドラマ並みとは言わないまでもそれぞれに多くのドラマを経験してきているはずであり、現在進行中のドラマでもある。

今、こうしていろいろな文章を書かせていただいているが、一部を除きその多くはノンフィクションである。種々の事情や都合で設定とか病名の変更はあっても、根底を流れるストーリーは現実のものである。その中にはうれしい結果もあれば悲しい結末もある。すべてがハッピーエンドに終わらないのが現実ではあるが、今から紹介するエピソードはそのハッピーエンドのうちの一つである。

元旦の楽しみ(年末の苦しみ?)として年賀状があるが、なかでも患者さんからもらう年賀状はありがたいものである。最近の流行として子どもさんの写真入りの場合も多いが、そこに写っている笑顔に至るまでの過程は長く厳しかったはずであり、それゆえに仕事仲間や友人たちからの年賀状以上の重みが感じられる。今年も多くの年賀状を頂いたが、その中に洋子ちゃんからのものもあった。洋子ちゃんから年賀状をもらうようになって、もう10年になる。その当時、洋子ちゃんは小学校4年生のお転婆な女の子であった。ある秋の日、数日前から風邪気味だった洋子ちゃんが息苦しさ、胸部不快感を訴えはじめたため、かかりつけの小児科に入院した。ところが、その数時間後にはけいれんや意識障害、腎機能障害、そして完全房室ブロックという重症不整脈も出現したため、僕が勤務していた病院に転送されてきた。診断は風邪のウイルスによる心筋炎であった。また、意識障害、心不全、肝不全、腎不全など、全身の臓器に高度の機能障害がみられる多臓器不全を合併しており、生命的にも非常に危険な状態であった。人工呼吸器による呼吸管理、数種類の強心剤、多臓器不全に対する特殊薬剤の投与などのほか、完全房室ブロックに対しては心臓ペーシング、腎不全に対しては人工透析(血液透析)や血漿交換など、あらゆる治療が行われた。人工透析は泌尿器科、それ以外は小児科が担当したが、不整脈と心不全が最大の問題であったため、小児循環器科医数人でチームを組んで交代で泊まり込んで治療に当たった。その結果、12月中旬には腎機能が改善して尿がしっかり出るようになり、ちょうどクリスマスの日に強心剤も中止することができた。そして、翌年の1月下旬には笑顔で退院していったのであった。しばらくは外来で慎重に経過を見る必要があったが、奇跡的に洋子ちゃんは後遺症をまったく残さずに回復したのであった。

その後、毎年お父さんと洋子ちゃん自身から1通ずつ年賀状をいただくようになった。「小学校は楽しいです」「毎日元気に中学校へ通っています」「高校生になりました」「もうすぐ卒業です」「短大へ進学しました」「成人式を迎えました」もともときれいな顔立ちであったが、写真入りの年賀状でみる洋子ちゃんはとても美人であった。そして、ある年の年賀状の洋子ちゃんは、やさしそうな新郎の横で白いウェディングドレスを着て微笑んでいた。彼女自身の字で「結婚しちゃいました!」と書き添えてあった。その写真を見ていると、入院当時の洋子ちゃんとご家族の闘病の様子がまるで昨日のことのように浮かんできた。頑張り屋の彼女のことだから、きっと素晴らしい家庭を築くことだろう。洋子ちゃん、おめでとう、そしてお幸せに!

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