香川県高松市の小児科・アレルギー科・小児循環器内科 医療法人社団裕心会 あきた小児科クリニック

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便り5.扉の反対側から

1.古ぼけたアルバム

「なあ秋田君、いい機会を与えてもらったんだと思って、それをこれからの自分に生かすように考えようよ。こんな時にしかできないことを一緒に探してみようや」小学校6年の時、交通事故で長期入院してくさっていた僕に担当医が掛けてくれた言葉でした。この担当医と過ごした3ヶ月は、結果的にその後の僕の人生にとってかけがえのないものとなっていく訳です。「退院が決まったら、病院の屋上でキャッチボールをしよう」彼と交わしたささやかな一つの約束が、3ヶ月にわたる僕の入院生活を支えてくれたのでした。

「それは現実から目を背けてるだけだよ。今の君は病気なんだ。こんな時、そこから逃げるのか立ち向かっていくのか、君がどっちを選ぶかだよ」交通事故の後遺症に苦しめられながらもなんとか中学生活を開始した矢先、今度は急性腎炎の発病、そして慢性腎炎へと移行。相次ぐ怪我や病気による入院で自暴自棄になっていた頃、今度の担当医もまた僕の心情に寄り添いながら、厳しくも暖かい対応を続けてくれたのでした。当時、嫌というほど目にした大学病院の診察室や病棟の扉はとても重く冷たいものでした。その扉の印象は、多感な時期に入院、通院を繰り返した僕の心そのものだったのでしょう。しかしその一方で、二人の担当医から学んだこともまた大きかったのです。


2.扉の反対側から

年月を経て、診察室や病棟の扉を反対側から見る立場になった今、まるで当時の自分を見ているような子どもたちによく出会います。「先生もそうだったんだ」そう語りかけたくなる場面も多いのです。診察している僕のどこかから子ども時代の映像が時に顔を覗かせて、”どんな気持ちで病院に来てたんだったっけ?”と今の自分を叱咤するのです。

子育てにおいても、親の立場からだけでなく、扉の反対側、つまり子ども側からの見方や考え方に思いをめぐらせてみることが必要な時があります。それはもちろん甘やかすとか、わがままを何でも聞いてやるとかいった意味ではありません。大人の目から見た対応だけでなく、子どもの状況や心情に見合った接し方が大切だということです。たとえばいじめられて帰ってきた子どもに、「泣くな!」とか「やり返してきなさい!」と言う人がいます。それができないから泣いて帰ってきたわけですから、そう言われると子どもは親にさえ相談できなくなります。つらい気持ち、心細い自分の行き先はどこにもなくなってしまうのです。こんな時にこそ、親自身が子どもとしてその状況にいたらどうか、まず考えてみましょう。同時に、親にしかわからない自分の子どもの性格や特性も考え合わせてみましょう。そして、黙って抱きしめてあげることから始めましょう。

心身症に陥る子どもたちも非行に走る少年や少女たちも、子どもの側から考えれば、結局本気で向かい合ってくれる大人を待っている、あるいは探しているような気がしてなりません。大人が変わらなければ子どもは変われないのです。子どもの人生が順調な時にはあまり目立たないことですが、子どもが逆境の時、ピンチの時こそ、周りの大人たちの心が試される時なのでしょう。

扉の反対側から考えてみる子育て、それは時に苦い思い出を掘り返したり、弱い自分を見つめさせたりするけれど・・・。

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